このサイトはCookieを使用しています。 サイトを閲覧し続けることで、Cookieの使用に同意したものとみなされます。プライバシーポリシーを読む>Search

検索
  • naratv huawei banner pc

    夏の高校野球予選中継もトラブルなく、中継車・サブ設備をフルIP化 - 奈良テレビ放送

奈良テレビ放送(以下、奈良テレビ)は2019年4月に、中継車とL1サブシステムを4K/HD対応のフルIPで運用し始めた。そこで採用されているのが、「HUAWEI CE8850-32CQ-EI」だ。
 

左からファーウェイ・ジャパン 池田俊樹、奈良テレビ放送 技術局 局長 浅井隆士氏

左からファーウェイ・ジャパン 池田俊樹、奈良テレビ放送 技術局 局長 浅井隆士氏

1973年に開局して以来、奈良県唯一の県域民間放送局として、奈良の魅力を発信している奈良テレビ。毎週月~金曜日の夕方5時半から始まる 「ゆうドキッ!」は、同社の看板番組。また、夏の全国高校野球選手権奈良大会(以下、高校野球奈良予選)を全試合奈良テレビが制作しており、地上波では3回戦以降の全試合を生中継するなど、奈良に密着したテレビ局として慕われている。

中継車とL1サブをフルIPで刷新

奈良テレビでは2015年より、中継車とL1スタジオサブシステム(以下、L1スタジオ)の更新の検討をはじめた。L1スタジオは主に夕方の帯番組などの制作に使われており、一方の中継車はスポーツ中継や報道などに活躍している。「海外では放送局のIP化が行われつつありましたが、日本では『本当にできるのか』という声が大半でした。メーカーも単体機器のIP対応は始めていましたが、システムとしては提案できない状況でした」と技術局長の浅井隆士氏は振り返る。だが、2017年にようやく4K/HDの制作に対応したIPサブシステムのソリューションがソニーから提案されるようになり、本格的な検討が始まった。

L1スタジオも中継車も今後10年は使うシステム。今後、4Kがデファクトになっていくことを考えると、費用が割高になったとしても、HDも4Kも制作できるシステムが必要だったという。

浅井氏は「4K/HD対応の設備を作るならIPしかないと思っていました」と言い切る。その理由は大きく2つ。1つは系統図が IPの方がシンプルになること。もう1つが、4KとHDをシリアルで伝送するにはベースバンド(非圧縮)となるため、4K専用とHD専用の機器の二重投資が発生したり、4Kがデファクトとなったときに、不要になる設備が出てきてしまうことだ。「IPで構築すると4K/HDはスイッチャーを切り替えれば対応できます。つまりIPなら今後10年間、不要となる機器は出ず、設備の有効活用ができると考えました」(浅井氏)

最終的に導入したのは、ソニーが提案した「IP Liveプロダクションシステム」*1。4Kに加えHDにもIPライブ伝送技術「ネットワーク・メディア・インターフェース(NMI)」を採用することで、SDIルーティングスイッチャーのない映像システムを実現するソリューションだ。そのIPルーターとして採用されたのが、HUAWEI CE8850-32CQ-EIである。浅井氏は「ファーウェイは後発メーカーでしたが、その当時、ソニーが同ソリューションでファーウェイについてもきちんと検証されていたので、不安はありませんでしたね」と語る。しかも今回は閉域ネットワークでの映像伝送としてのIPルーター。それも不安を払拭する要素になった。

*1:2023 年2 月現在「Networked Live」

酷暑の高校野球、予選中継もトラブルなく

2019年4月1日より、フルIP化した中継車とL1スタジオのシステムが稼働した。「現場で実際のオペレーションをしている人たちは、IP化されたシステムということをまったく意識せずに使っています」(浅井氏)

3年が経過し、「放送事故につながるトラブルはほぼゼロです」と浅井氏。IPルーターとIP Liveシステムマネージャー(LSM)が二重化されていることが、功を奏しているという。IT機器は熱や振動に弱いと言われているが、「中継車もトラブルはない」と浅井氏。高校野球奈良予選の中継で「去年の夏、準々決勝の時から中継車の空調が壊れました。でも中継を中止するわけにはいかないので、自然換気と扇風機を駆使して、7試合、放送事故なく乗り切ることができました」

「いろいろなサードパーティー製品が載っている中で、ファーウェイの機器が一番、音も静かで熱の発生も少ない。優秀だと思います」(浅井氏)
 

中継車・L1スタジオのフル IP 化目的で導入されたIPルーター「HUAWEI CE8850-32CQ-EI」

中継車・L1スタジオのフル IP 化目的で導入されたIPルーター「HUAWEI CE8850-32CQ-EI」

放送システムをIP化するメリットとは?

放送システムをIP化する最大のメリットは、これまでのように旧設備を撤去して更地にすることなく、部分ごとの設備を更新できるようになることだ。「設備投資の分散化が実現し、柔軟性と将来性が向上しました。またケーブルの数が減らせ、システムが柔軟になること。スイッチャー1つとっても、従来は64本刺さっていたケーブルが、IPになると4本と16分の1になります。ケーブルに引きずられることなく、設備更新ができるのが良いですね」(浅井氏)

IP推進派と言われる浅井氏だが、「すべての設備をIP化すればいいとは思いません。用途と目的、IP化のメリット・デメリットを考えて判断することが重要です」とアドバイスする。「例えば設備間をつなぐケーブルが100~200本あるのなら、IPでつなぐことをお勧めします。ですが、当社の場合、サブの出力とマスターの接続ケーブルは2本のみ。このようなケースでは、マスターとIPで接続するより、従来どおり同軸ケーブルで接続するほうが様々なリスクが減ります」(浅井氏)

浅井氏が IP化して大変だと感じているのは、それぞれの設備の責任分界点だという。従来は、それぞれの設備の分界点はケーブル接続口で分かれていたが、IPシステムでは、おのずとシステム間が IPで接続されるからだ。「特に放送局ではネットワークエンジニアが不足しています。テレビ局のIP化は、ネットワークエンジニアをどう確保していくかが業界としての課題だと思います」(浅井氏)奈良テレビではリモートプロダクション(リモプロ)の導入も検討しているという。「それも大がかりなものではなく、簡易的な方法で実現したいです」と浅井氏。リモプロの導入により、スイッチャーを担当するスタッフの移動をなくすためだ。「この夏の高校野球の予選で、検証する予定です」(浅井氏)奈良テレビの挑戦は、これからも続く。

TOP