新社屋のネットワークにWi-Fiを採用 ― 静岡第一テレビ
CampusInsightの導入で運用負荷を大幅に削減
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静岡第一テレビは、静岡県を放送対象地域とする日本テレビ系列のテレビ局だ。2022年4月にグランドオープンした新社屋に整備したが、そのWi-Fiネットワークに採用したのがファーウェイのWi-Fi6屋内用アクセスポイント「AirEngine 8760-X1-Pro」である。
1979年に開局した静岡第一テレビ(以下、Daiichi-TV)は、「every.しずおか」や「まるごと」といった情報ワイド番組など、静岡県民が「今、知りたい情報」を伝える、県民と心の通う、心に応える番組づくりを行っている。2016年にロゴを一新すると同時に、「NEXT VISIONへ」というキャッチフレーズを掲げ、テレビからクリエイティブなメディアプラットフォームに変化すべく、取り組みを進めている。
受付前
(中央:株式会社静岡第一テレビ 技術プロデュース局技術プロデュース部 システム室 木下ゆみ氏、右2番目:同 泉地裕史氏、右:[営業担当]ファーウェイ・ジャパン 法人ビジネス事業本部 セールスマネージャー 黄 進凱(オオイ チンカイ)、左:[SEチーム]同 メディア事業部 部長 池田俊樹、左2番目:同 ネットワークソリューション&セールス部 プロダクトマネージャー 孫晗)
Daiichi-TVでは19年4月より、開局以来増改築を繰り返してきた旧社屋の隣に、新社屋の建設を始めた。当時の旧社屋の社内ネットワークには、Wi-Fiアクセスポイント(AP)も5台設置されていたが、ほとんど使われなかったという。なぜなら、有線LANに比べると圧倒的にスピードが落ち、また業務に使っているPCはデスクトップが主流だったからだ。
「ノートPCもありましたが、15インチや17インチという持ち運びには適さない大きさで、しかもセキュリティワイヤーで席に固定するという形で使用していました」。こう語るのは技術プロデュース局技術プロデュース部システム室の泉地裕史氏である。
新社屋の建設が始まった19年4月は、働き方改革関連法案の順次施行が始まった頃。Daiichi-TVの放送業務は県内に限定されているが、東京支社、関西支社(大阪)、名古屋支局、東部支局(静岡・沼津)、浜松支局(静岡・浜松)に事業所を構えている。「東部と浜松では報道系の業務を行っていますが、その他の事業所は営業拠点として機能しています」(泉地氏)。そのため、営業担当者にとっては、自分のPCを携帯し、自由にどこでも仕事をしたいという要望もあったという。課題は社員だけではない。「システム室の負担を軽減したいという思いもありました」と泉地氏は語る。
Daiichi-TVの社屋で働くのは、Daiichi-TVの社員だけではない。映像制作に関わるパートナー企業のスタッフなども働いているため、ネットワークに接続されるPCは350台にも上っており、そのネットワークとPCなどの運用管理も、すべて泉地氏たちが所属するシステム室が担当している。「例えば配属先が制作から編成のフロアへ異動するとなると、PCも変える必要があるのでプロファイルを作り直したり、IPアドレスを変更したりなど、設定作業が必要です。それらの作業は放送終了後から放送開始前の1~2時間に行うという深夜作業。当然、大規模な人事異動の時は1日で切り替えが終わらず、PCにログインできないという待機時間ができていました。さらにレイアウト変更が伴う人事異動では、LANケーブル敷設し直し、PCの設置という作業が発生するため、大きな手間とコストが発生していました」と、IPアドレスの設定を含め、PCのキッティング作業などを一手に担当しているシステム室の木下ゆみ氏は説明する。
「自分のPCで自由にどこでも仕事をしたい」「人事異動に伴うレイアウト変更のたびに、LANケーブルを敷設し直すなどのムダな作業を削減したい」──。このような問題を解決する一つの手段が無線LANの採用である。
無線LANの採用を決めた理由はもう一つある。旧社屋から新社屋への引っ越し作業中は、旧社屋と新社屋を並行稼働させ、業務を行うことになる。「有線LANで徐々にセットアップしていくことは難しく、新社屋は無線LANしかないと考えました」と泉地氏は振り返る。 そこで新社屋建設が始まる前年の18年より、泉地氏は無線LANの調査をスタートした。テレビ局で取り扱う映像データや放送運行データなどは、一般的なオフィスアプリのデータと比べると非常に重い。それらを有線ネットワークと遜色ないスピードで送受信できることが求められることから注目したのがWi-Fi 6だった。Wi-Fi 6であれば規格上、有線と遜色のない高速転送が可能になる。
「18年末にはWi-Fi 6に対応したルーターが出始め、新社屋が稼働する21年3月頃には、Wi-Fi6に対応したスマートフォンやノートPCが登場していると考え、Wi-Fi 6に対応した無線LAN製品の比較検討を始めたのです」(泉地氏)
複数製品を比較し、泉地氏が選んだのがファーウェイの屋内用アクセスポイント「AirEngine 8760-X1-Pro(以下、8760-X1-Pro)」である。8760-X1-Proは16空間ストリームに対応し、10.75Gbpsの超高速、常時接続モビリティを実現する。「他製品と比べファーウェイのWi-Fi6に独自の技術であるスマートアンテナ性能の差別化ができます」とファーウェイジャパン 黄進凱(オオイ チンカイ)は付け加える。
同製品を導入する決め手となったのは、製品としての信頼性の高さや機能の高さに加え、放送系システムなど、外資系メーカー製のシステムと親和性の高さもポイントになったという。例えばスマートアンテナ機能もその一つ。これを活用することで、隅々まで電波をカバーできるからだ。このような高性能な製品ながら、「価格が驚きの安さ。8760-X1-Proしか選択の余地はないと思いました」と泉地氏は語る。
Daiichi-TVでは、社屋のどこでもネットワークにつながるよう、AirEngine 8760-X1-Proを約70台設置。またシステム室の運用コストや負担軽減のため、ネットワーク可視化ツール「iMaster NCE-CampusInsight(以下、CampusInsight)」も導入した。CampusInsightはテレメトリー技術(遠隔からネットワーク機器のパフォーマンスデータを収集、監視、分析するための技術)に対応し、リアルタイムでネットワーク状況を収集、高度な可視化するとともに、AIの技術を利用し、ネットワークの不具合の分析を行ってくれるツールだ。
1F カフェエリアにもAP「AirEngine 8760-X1-Pro」を複数設置、どこでもネットワーク接続ができるようになっている
新社屋への移転を機に、社内で使うPCはノートPCへと切り替えた。外でも容易に使えるよう、LTE通信機能も搭載している。これら約350台の社内PCに加え、社員個人が持ち込んだスマートフォンやPCなども無線LANで構築した社内ネットワークにつなげているが、通信スピードなどについて「問い合わせが来る」こともなく、順調に稼働しているという。
もちろん「敷設には苦労もありました」と泉地氏。最も苦労したのは、新社屋の内装工事と同時進行だったため、どういうレイアウトでどこに人が集まるのか、決まっていないなか、APの設置を検討する必要があったことだ。だがそれも8760-X1-Proに助けられたという。「8760-X1-Proならシャットダウンしても次に電源を入れれば、すぐにつながってくれます。安心して設置場所を移動させることができました」と木下氏は満足そうに語る。
導入効果の第一が社員の業務効率が向上したこと。例えば従来、制作スタッフは、PCが机に固定されていたので、作成した原稿をプリントアウトして映像編集室や音声編集(MA)室に行ってプレビューし、修正があればまた自席に戻って作業しなければならなかった。しかし今は、PCを持ち運べるので、どこでも作業ができる。もちろん営業担当者も同様だ。「どこでも作業ができるようになり利便性が上がったと、社員からは高評価です」と泉地氏は言う。
第二にシステム室の運用負荷が大幅に削減したことだ。従来、人事異動のたびに行っていたIPアドレスの設定などの作業はなくなり、グループウェアやワークフローの設定だけになったため、終業後の午後5時半から開始しても、「深夜作業に及ぶことなく、午後9時頃には退勤できるようになった」と木下氏は笑顔を見せる。それだけではない。CampusInsightの導入により、従来であれば1日かかっていたネットワーク不具合の調査が数分で特定可能になったという。さらに最適な修正案を提示してくれるため、「運用負荷が非常に軽減されました」と木下氏は述べる。また導入して改めて気づいたのが、CampusInsightの使い勝手の良さだという。CampusInsightはユーザーフレンドリーなUIを採用しているため、「直感的に操作できます」(木下氏)。
「サポートの手厚さにも導入後に気づきました」と泉地氏は明かす。「例えばバグがあっても、他のメーカーなら『次のバージョンで対応します』という回答をもらうことが多いのでが、ファーウェイの場合は『どうしたら対応できるか検討してみます』という回答してくれるんです。それが信頼性の高さにつながっているんだと思いました」(泉地氏)
会議室エリアにもAPを設置。従来のように会議のためにAPを設置したり、PCを用意する必要がなくなった
今後、Daiichi-TVでは8760-X1-Proのさらなる活用として、IoTスロットの検討している。「例えばIoTセンサーを取り付けることで、社員がいつ社内のAPに接続したのかなどの情報から出退勤時間を推定して健康情報と紐付けて管理したり、どこで働いているのか、どのフロアに人が集まっているのかなどの情報を把握することもできるようになります。コロナ禍以後、体調を崩す社員は増えています。仕事を効率化するだけではなく、より社員が健康に働けるよう、働き方改善に貢献できる仕組みにも活用していきたいです」(泉地氏)
また大規模な自然災害が起こっても、放送業務に影響がでないよう、クラウドの仕組みを活用したBCP対策の強化も検討しているという。
NEXT VISIONへ。このキャッチフレーズが表す通り、Daiichi-TVは新しい時代のメディアへの一歩を踏み出した。今後、どんな新しい仕掛けを検討していくのか、楽しみはつきない。