将来を見据えたネットワーク構築で、病院経営に寄与する医療DXを推進
信頼性と拡張性の高いインフラを整備し、医療の質と患者サービスを向上
このサイトはCookieを使用しています。 サイトを閲覧し続けることで、Cookieの使用に同意したものとみなされます。 プライバシーポリシーを読む>
企業ユーザー向け製品、ソリューション、サービス
大阪市北区の地域医療を支える社会医療法人協和会加納総合病院は、電子カルテの更新に合わせて院内ネットワークを全面的に刷新。ファーウェイのネットワークスイッチ「CloudEngine S5732-H-V2」などを採用したネットワークを構築し、2025年3月から運用を開始した。新たなネットワークは、10Gbpsの高速通信と高い安定性を実現。業務用スマートフォンでの通話や電子カルテへのアクセスがストレスなく可能になったほか、患者向け無料Wi-Fiも提供されるなど、医療の質と患者サービスが向上。コストパフォーマンスと将来に向けた拡張性を両立したネットワークへの投資によって、地域医療を担う存在であり続けるための医療DXを推進する同院の取り組みを紹介する。

写真右から、久保田真司氏(社会医療法人協和会加納総合病院院長)、加納繁照氏(同理事長)、山本憲(華為技術日本株式会社 常務執行役員法人ビジネス事業本部副事業本部長)、甲斐隼氏(株式会社エスエスネット技術営業部サブリーダー)、渡邉陽司(華為技術日本株式会社 法人ビジネス事業本部西日本統括本部第1営業部部長)
加納総合病院は、超急性期から回復期、慢性期まで、大阪市北区の地域医療を担うケアミックス型病院である。24時間対応の救急センターなど高度医療に対応すべく体制を整えているだけでなく、回復期リハビリテーション病棟、療養型病棟といった病期に応じて患者中心の医療を実践している。また、法人としては、北大阪病院、ハートフルクリニック、淀川介護老人保健施設ハートフルなどを擁しており、グループで地域完結型医療を提供してきた。
この診療の支えているのが、電子カルテをはじめとした医療情報システムとネットワークである。2025年3月には、医療DXの取り組みの一環として、電子カルテとオーダリングシステムを更新。ソフトウェア・サービスの「新版e-カルテ」と「NEWTONS 2」の運用を開始した。さらに、業務用スマートフォンの導入やナースコールシステムの更新も実施したほか、患者サービスの向上を目的に、モバイル診察券「PokeMed」(ソフトウェア・サービス)と診療費後払いシステム「ラク〜だ」を採用。院内ではデジタルサイネージでの情報提供を開始した。一方で、同院では、法人内の他施設との間でデータベースの共通化をめざしている。そして、この医療DX施策を推進するためのインフラとして、ネットワークも刷新した。
同院情報システム課の田中陽子氏は、「医療DXを進めることで今後通信量が右肩上がりに増大していくことが予想されます。加えて、法人グループ施設間の共通データベース『One DB』の構築によって施設間での情報共有も進みます。そこで、高速かつ安定した通信環境を整備するために、ネットワークも刷新することにしました」と説明する。
このような背景から同院では、ファーウェイのネットワークスイッチ「CloudEngine S5732-H-V2」、Access Point(AP)アクセスコントローラー「AC6508」、AP「AirEngine 6761-21」を採用したネットワークを構築。2025年3月から運用を開始している。
同院では、2024年春ごろから電子カルテとネットワークの更新に向けて具体的な検討を開始した。ネットワークについては、構成やネットワークスイッチなどの機器の仕様を策定し、国内外のベンダーの製品を候補に挙げて選定を進めた。田中氏は、「選定に当たり重視したのは、信頼性とコストパフォーマンス、そして将来への拡張性でした」と述べる。
同院では、業務用スマートフォンの導入を契機にネットワークに接続するデバイス数が増加すると予想されたことから、将来の拡張性を見据えて、段階的に10Gbpsの高速ネットワークの構築をしていくこととした。検討を進める中で、ファーウェイ製品については海外企業の製品のため、情報が不足していたこともあり、当初は不安視する意見もあった。しかし、医療機関でのファーウェイ製品を採用している事例説明を受け、その実績を評価して医療においても安全かつ安定して運用できると判断した。そして、高性能・高機能を適正価格で提供するという、ファーウェイ製品のコストパフォーマンスの高さも採用の決め手となった。
同院が採用したCloudEngine S5732-H-V2は、1 / 2.5 / 5 / 10Gbpsの通信速度が可能な柔軟なマルチギガビット・イーサネット(GE)ポートを採用しており、Wi-Fi 6による高速なワイヤレス通信にも対応。RTU(Right to Use)ライセンスによって、個々のポートにライセンスを割り当てて、オンデマンドで通信速度を高速化できる。これにより、施設の予算やニーズに応じた最適なネットワークの構築が可能になるとともに、高い拡張性を備えている。信頼性・安全性も高く、AIによる通信の最適化や異常検知、自動化技術の「iMaster NCE」による集中管理も可能だ。加えて、省電力設計により電気代も抑えることもできる。
併せて導入したWi-Fiネットワークの管理を行うAC6508は、512台のAPと4096台の端末を管理可能。10Gbpsの高速ネットワーク通信ができ、医用画像などのデータの送受信もストレスなく行える。「SmartRadio」機能によるスマートローミングで、APの負荷を分散して、ユーザーが移動しながら端末を使用しても安定した通信ができる。また、Wi-Fi 6対応APのAirEngine 6761-21は、3.55Gbpsの通信速度を実現しており、独立したRFスキャンによってローミングを支援し、ネットワークの干渉を抑えて、質の高いデータ通信や通話を行える。
新しいネットワークは、電子カルテ更新のタイミングに合わせて2025年3月から運用している。VLANにより電子カルテ系とインターネット系の2系統で運用している。院内では、通話のほか電子カルテやナースコールなどを使用できる業務用スマートフォンが約300台、電子カルテ端末用ノートPCが約250台稼働しており、Wi-Fi 6ネットワークに接続。電子カルテ端末用デスクトップPCは約250台あり、有線ネットワークで使用している。導入したCloudEngine S5732-H-V2は48ポートを有しており、このうち12ポートをWi-Fi 6ネットワーク用に、10GEポートとして使用。それ以外の36ポートを有線ネットワーク用として、1Gbpsの通信速度で接続している。今後、業務用スマートフォンの台数を増やすような場合、ネットワークスイッチの交換や増設は必要なく、ライセンスの変更のみで10GEのポートに切り替えるだけでよい。
AirEngine 6761-21は、事前に電波測定を行った上で施設内に226設置。業務用スマートフォンは、FMC(Fixed Mobile Convergence)により施設内ではWi-Fi 6ネットワーク経由で外線と内線での通話が可能で、AC6508によるローミングの最適化により、エレベータ内などを除き移動中でも通信が途切れる心配がなく、高品質の通話を実現している。

加納総合病院が構築した拡張性と柔軟性を兼ね備えたネットワーク構成図
運用開始以降、ネットワークは大きなトラブルもなく順調に運用されている。構築段階ではトラブルが生じたものの速やかに解決することができた。田中氏は、「ファーウェイのエンジニアと担当者がすぐに駆けつけて、中国本社と連携して対応に当たってもらいました。当院としては、この時の迅速なサポートを高く評価しています」と振り返る。つながらないネットワークは、医療機関にとって致命傷になりかねないだけに、ファーウェイのサポート体制は心強い。
また、10Gbpsの高速通信環境を整えたことで、Wi-Fi 6ネットワークでは、速度の遅延が生じることなく、業務用スマートフォンやノートPCを使用できている。さらに、医療DXのためのインフラが整備されたことで、診療にも良い影響が出てきている。Wi-Fi 6ネットワークで主に使用される業務用スマートフォンは、院外からでも電子カルテにアクセスできることから、処方内容の確認などを画面を確認しながら行えるようになった。以前の通話だけよりも、コミュニケーションが深まり、医療の質や安全性の向上にもつながっている。加えて、新たに患者向けに無料Wi-Fiサービスの提供も開始した。これにより、患者サービスの向上も図ることができている。2023年に公衆PHSサービスが終了し、医療機関ではスマートフォンへの移行が進んでいる。同院のネットワーク刷新は、今後スマートフォン導入を検討している施設にとって参考となる事例と言える。
インフラとしてのネットワークが整備されたことで、同院では今後さらに医療DXを加速させることにしている。業務用スマートフォンやノートPCの利用の拡大、そして、法人グループ施設の共通データベースであるOne DBの構築に合わせて10GEポートを増設し、Wi-Fi 6ネットワークを強化することを見据えている。CloudEngine S5732-H-V2により柔軟性と拡張性のあるネットワーク環境によって、中長期的な医療DX施策を計画でき、将来性を考慮した無駄のない適切な設備投資をすることができた。田中氏は、「今回、十数年先を考えたネットワークを構築することができました。これは病院経営にも貢献することだと評価しています」と強調する。医療DXによって、同院はこれからも大阪市北区の地域医療を担う存在であり続けるだろう。